もう一度抱いて

俺の言葉に、朝田さんは何か考えるような素振りをしている。


「なぁ、俺の基準で話してもええ?」


「何…?」


俺は一度深呼吸すると、彼女の瞳を真っ直ぐに見つめた。


「朝田さんは、かわいそうな人やない」


目を見開き、戸惑った様子の朝田さん。


動揺が伝わってくるけど、俺は続ける。


「朝田さんは、かわいそうやない」


「ちょっ、やめてよ」


「何回でも言うたる。

朝田さんは、かわいそうやない。

幸せな子や…。

両親にこんなに綺麗に産んでもろた。

両親にこんなに健康に産んでもろた。

仕事もちゃんとやっとるし、自分で生活出来てる。

すごいやん。

朝田さんは、むっちゃ幸せや。

そんな朝田さんが、かわいそうなはずないやろ…?」


しばらく俺を睨むように見ていた彼女やったけど…。




しばらくして、




大粒の涙が、




彼女の頬を伝い始めた。