もう一度抱いて

「あぁ、わからへんなあ!

朝田さんの気持ちなんか、さっぱりわからへん!」


「なっ…」


俺の返しが意外だったのか、彼女は話す言葉を見失っているようだ。


「だって、そうやろ?

俺は朝田さんやないんやから、朝田さんがどれだけつらかったか、想像でしかわからへんもん。

もしかしたら俺やったら軽く乗り越えられる事かもしれへんし、逆に立ち直れんくて非行に走ったかもしれん。

そんなん、わからへんやん?

実際、そうなってみんことには…」


俺の話に、彼女は意外にも真剣に耳を傾けていた。


「かわいそう、かわいそうやないは、人の数だけ程度の大きさに違いがあるっちゅうことや。

せやから俺は、無責任にわかるやなんて言いたないんや」


つらかったんやな…とは言うてもええけど、わかるとは簡単に言われへん…。


死ぬほどつらかったことなら、なおさら…。


「俺、思うんやけど…。

朝田さんを一番かわいそうやと思てんのは…。

朝田さん、


アンタ自身なんとちゃう?」