スタジオに行ったら、まだ誰もおれへんくて、俺はベースをケースに入れたまま壁に立てかけて、キーボードの椅子に座った。


以前ここで里桜ちゃんが、演奏してくれたよな…。


あれ以来キーボード弾いてもろうてへんけど、また聴いてみたいな。


そんなことを思てたら、ガチャンとスタジオの扉が開いた。


「……っ」


一瞬、言葉を失った。


そこに立ってたんは…。


まるで別人みたいになった里桜ちゃんやった。


俺は驚いてることを悟られんように、極力平静を装うことにした。


「お疲れー」


明るく声をかけた。


「お疲れ様」


里桜ちゃんはにっこり笑うと、ゆっくりスタジオの中へ入って来た。


亜美ちゃんに聞いとったけど。


想像以上やった。


ホンマに寝てへんのや。


目の下が青くなっとる。


メイクでなんとか誤魔化されてるけど、それでも色がわかるやなんてよっぽどや。


目も充血しとる。


それに…。


細くなった。


あんな細くなかったはずや。


頬もこけてもうて…。


俺は胸がチクリと痛んだ。


里桜ちゃんにこんな思いをさせるやなんて。


キョウセイ、


お前はアホやで…。