「私の心も、キョウセイだけのものだよ…」


そう。


あなた以上の人なんて。


もうこれから先、見つけられやしないと思う。


前を向いたまま、力強くそう伝えれば。


キョウセイはうんと何度も頷いてくれた。


しばらく立ち尽くしていた私達だったけど、キョウセイは右手に持っていたカバンをそっと私に手渡した。


キョウセイの部屋に泊まるつもりで、荷物を沢山詰め込んだ重いカバンを…。


キョウセイはそのカバンをせつなそうに見つめると、手を繋いだまま、また前を見据えた。


私も同じように、前を向く。


別れの時間は残酷にも、刻一刻と迫っていた。