しばらく抱きしめあった後、私とキョウセイは立ち上がり、手を繋いだまま、さっき歩いた道を戻った。


キョウセイの大きな靴を、じっと見つめてみる。


この距離がもっと長ければいい。


出来れば永遠に、どこへも到着しなければいいのに…。


そんな馬鹿なことを思ったけれど、無情にも、あっという間に病院の玄関に到着してしまった。


手を繋いだまま、開いては閉まる病院の自動ドアを、二人でじっと見つめる。


蛍光灯の明かりが外に漏れて、ドアが開閉するたびに、床をゆらゆらと揺らしていた。


「永瀬…」


キョウセイは前を真っ直ぐ前を向いたまま、私の名を呼んだ。


「ん?」


私も前を向いたまま答えた。


「前にも言ったけど。

俺の心は、永瀬だけのものだ…」


キョウセイは今日初めて、力強く言葉を発した。


私がキョウセイの手をぎゅっと握ると、キョウセイはそれ以上に力を込めて握り返してくれた。