もう一度抱いて

「どうしてそんな簡単に死を選ぶんだよっ。

きっとこの病院には、明日を生きたくて生きたくて必死に闘ってる人が大勢いるはずなのに。

どうしてまだまだ生きられる人が、死を選ばなくちゃいけないんだ？

俺には、それが理解出来ないんだ…」


苦しそうに言葉を紡ぐキョウセイ。


それはきっと、お姉さんに向けられたものなんだろう。


「死んでなんか、欲しくないんだよ…っ」


キョウセイの気持ちが痛いほど伝わって、私は息をするのも辛くなっていた。


「永瀬…」


「ん…？」


無理矢理口角を上げて、ぎこちなく目を合わせれば。


キョウセイは力のない悲しげな瞳で私を見つめていた。


夜風がキョウセイのサラサラな美しい髪を揺らし、こけた頬が月明かりで青白く光り、なんだか消えてしまいそうだった。


キョウセイは震える指で私の頬に触れると、小さく深呼吸をした。




「ごめんな…」