もう一度抱いて

しばらくしてキョウセイは腕の力を抜き、下を向いたまま私の右手を取った。


そして落ちた私の荷物を片手で持ち上げると、手を繋いだままゆっくりと歩き始めた。


薄暗い細い道を通って向かった先は、病院の裏にある憩いのスペース。


ベンチがあったので、とりあえずそこに二人で腰掛ける。


もう夜なので、誰の姿もなかった。


キョウセイは黙ったまま、視線を地面に落としている。


私はそんなキョウセイの整った横顔を、ただじっと見つめていた。


「とりあえず、さ…」


中低音の優しい声が、秋風に乗って宙を舞う。


「命に別状はない。

出血が少し多くて、軽くショック症状が出てたんだけど…。

処置が早かったし、検査も異常が無いから、落ち着いたらすぐ帰れるそうだ」


「そう…」


京香、無事だったんだね。


良かった…。