もう一度抱いて

「お疲れー」


「お疲れ様です」


亜美と二人でスタジオに入ると、キョウセイの姿はなかった。


ギターが置いてあるから、トイレにでも行ったのかな?


私はとりあえず荷物を床に置いて、譜面台の前まで行った。


あれ?


なんだろう。


なんかここの空気、いつもと違う。


妙に違和感がある。


ふと不安になって、小山君と相原君を交互に見る。


彼らの顔がいつもと違う気がする…。


一体、どうしたんだろう…?


怖くなって、思わずぎゅっと自分のブラウスを握る。


その時だった。


「里桜ちゃん…」


小山君が私のそばに近づいて来た。


「な…に…?」


不安になっていたせいか、震えた声が出てしまった。


小山君が、少し言いにくそうに目を細める。


どうしたんだろう?


一体、何の話…?


「さっきね、僕の携帯に朝田さんの会社の先輩から電話が入ったんだ」


「えっ?」


京香の会社の人から、どうして小山君に電話が…?


「なんかね。朝田さんが、昨日から会社を無断欠勤してるみたいなんだ…」


「無断欠勤?」


どういう…こと?


「携帯も通じないらしいんだ。
それでキョウセイに、朝田さんの様子を見に行ってくれないかって頼んで来たんだ」


そ、んな…。


京香、どうして…?


まさか、京香の身に何かあったの?


どうしよう。


もしかして、また…?


ううん。そんなはずないよ。


そんなこと…。


ケホッと、小さな咳が出る。


なんだかここ、空気が薄い。


思わずくらっと倒れそうになる身体を、後ろから相原君が支えてくれていた。


「大丈夫?」


相原君の言葉に、私は前を向いたままコクンと頷いた。