もう一度抱いて

「よく考えてみたら…、アイツは姉貴じゃないんだもんな…。

アイツを救って自己満足に浸ったところで、姉貴はもう帰っては来ないんだ…」


キョウセイはそう言って、悲しそうに長いため息をついた。


「そうだよ。

京香はお姉さんじゃないよ。

それに…。

お姉さんが死を選んだのは、キョウセイのせいじゃないと思う。

気づいてあげられなかったことは、すごくつらかっただろうと思うけど、でも…」


「でも…?」


「そのことで必要以上に自分を責めないで欲しい。

自分に罰を与えるような生き方をしないで欲しい。

キョウセイだって、幸せになっていいんだよ。

きっとお姉さんも、それを望んでると思うんだけどな…」


キョウセイが音楽をやることを喜んでいたお姉さんだもの。


きっと、キョウセイが幸せになることを望んでいると思う。


自分のためにそんなつらい生き方をして欲しいなんて、絶対思ってないはずだ。