入って来たのは里桜ちゃんだった。


「お疲れー」


明るく声をかけた。


里桜ちゃんは一瞬口角を上げたけど、なんや目が笑うてなかった。


どないしたんやろ?


いつもと雰囲気がちゃう…。


不思議に思っていると、里桜ちゃんは真っ直ぐ小山の方へと歩いて行った。


「どうしたの?里桜ちゃん」


きょとんとする小山。


里桜ちゃんはカバンから何かを取り出すと、小山にそっと手渡した。


「何これ…。

えぇっ?退部届?

里桜ちゃん、なんで?」


た、退部届?


なんでやねん!


「今日で私、このバンドを辞めます。

今までありがとう。

お世話になりました」


そう言って深く頭を下げる里桜ちゃん。


その態度からして、冗談じゃないのが伝わって来る。


「ちょっと里桜、どうして突然?」


亜美ちゃんも聞いてなかった話なんや。


里桜ちゃんはふぅと長い息を吐いた。