もう一度抱いて

京香にそう言われて、私はぎゅっと目を閉じた。


京香の言う通りだ。


ステージの上から、京香を見ただけで動揺して。


キョウセイを思って、声が出なくなるなんて…。


こんな私が、彼らの大事なバンドの足を引っ張っていいわけがない。


「早く辞めた方がいいんじゃない?」


スラリと背の高い京香が、私の頭上に言葉を落とす。


私は唇が震えていた。


その時だった。


「ちょっと、アンタ。
何してるのよ!」


亜美の鋭い声が、非常階段に響き渡った。


「アンタ、ライブ見に来てたの?
里桜に何言ったのよ!」


金色の髪を揺らして、亜美が京香を怒鳴りつける。


京香はフンという顔をして、階段を走って下りてしまった。


「ちょ、ちょっと!逃げる気?」


亜美が追いかけようとした時、非常扉が勢い良く開いた。


「里桜ちゃん!」


相原君がベースを抱えたまま、私の近くに走って来た。