「なぁ、里桜ちゃん」


「ん?」


「バンド辞めんとってな」


「え?」


「キョウセイとおるんがつらいかもしれへんけど、辞めんとって欲しいねん」


歌も上手いし、キョウセイのしごきにもよう耐えるし、勘のええ子やからな。


これからどんどんライブに出たら、もっとすごいボーカリストになるかもしれへん。


「大丈夫。辞めないよ」


「そか。ほんなら良かった」


でも、多分、俺…。


それだけが理由やないねん。


俺はちょっとだけ、里桜ちゃんと身体を離した。


首を傾けて、里桜ちゃんの顔を覗き込む。


身長差あるし、こうせな顔が見えへん。


「ん?」


そう言って俺を見上げる里桜ちゃんの顔が。



月明かりでなんやむっちゃ綺麗に見えて。



思わず顔を近づけて。



優しくキスをした。