そんなことがあったせいで、私はその日、朝からキョウセイを意識しっぱなしだった。


バイト中、ちょっと目が合うだけで。


ちょっと、からかわれるだけで。


笑顔を向けられるだけで。


お揃いのヘアゴムで髪をしばっていることも。


もしかしたら…という気持ちが溢れて仕方がなかった。


そんな私の様子に気づいてか、昼食後、相原君が声をかけてきた。


「里桜ちゃん、どないしたん今日。
なんやずっとボケーッとしてへん?」


「う、ん。
ちょっとね」


「もしかして、キョウセイのこと?
彼女さんも帰ったしな。
ドキドキすんねやろ?」


ニヤリ笑われて、恥ずかしくなってしまう。


「相原君に言うんじゃなかったな。
これをネタに、いつもからかわれそう」


思わずぶぅと頬を膨らました。


「えー、何言うとん?
俺は口も固いし、頼りになるヤツやで。
相談にも乗ったるし、応援もしたる。
何でも言うてな」


本当かなー。


怪しいなー。


「何か気になることでもあんの?」


「ん?んー」


「さぁ、遠慮せずにお兄さんに言ってみなさい」


お、お兄さんって…。


同い年じゃないか。


不自然な標準語にも、思わずクスリと笑ってしまう。


「じゃあ…聞くけどさ」


「うん」


「相原君はさ、どういう時に女の子にキスしたくなるの?」


「え…」