もう一度抱いて

俺の言葉に、里桜ちゃんの目に涙が溜まっていく。


それでも俺は続けた。


「そら、里桜ちゃんは優しい子や思うで。
でもな、世の中にはその優しさを利用するヤツもおんねん。
まぁ、朝田さんはどうか知らんけどな。

でもさっき俺が、なんで友達なん?って聞いた時の里桜ちゃんの答え方からして、あんまり良い関係やとは思われへん」


里桜ちゃんの目からぽろぽろと涙が流れていく。


俺は持っていたお皿を横に置いて、里桜ちゃんの左手を両手で取った。


「ごめん。
ちょっとハッキリ言い過ぎた」


俺がそう言うと、里桜ちゃんは首を横に振った。


「ううん…。相原君の言う通りだよ。

私ね、京香は苦労してるから、かわいそうだからって、言いたいことの半分も言って来なかったの。

遠慮って言うのかな…。
腫れ物に触るような感じっていうか。
ものすごく気を遣ってたの」


なるほどな。


まぁわかるわ。


これ以上、傷つけたくなかってんやろな。


「そない遠慮して、何が友達やねん。
里桜ちゃんだったらどない?
腫れ物に触るみたいに接して欲しいか?

俺が里桜ちゃんにそれやったろか?
言葉選んで、ビクビクしながら、言いたいことも言わずにガマンして接したろか?」


「えっ、そんなのやだー」


「せやろ?
里桜ちゃんはそれを朝田さんにしてたんやで?
ひどいと思わへん?」


「…ホントだね。私ってひどいね」


そう言って、泣きながらも口角を上げて笑う里桜ちゃんが、なんやしおらしゅうてちょっと可愛いなと思った。