「里桜ちゃん」


「ん?」


「これ、俺が串に刺してん。
芸術的や思わへん?」


焼いてない串を一本取って、里桜ちゃんに見せた。


「えー?どれも同じに見えるけどー」


「何言うとんねん。
この肉と野菜の絶妙なバランス。
小山の串見たー?
芸術の欠片もあらへん」


「はー?拓真、何か言った?」


「小山は不器用なヤツやからなー」


「似たり寄ったりだろう?」


「ちゃう。俺のはちゃんと計算されとんねん」


「よく言うよ。目の前にあった野菜を、ただ刺してただけだろ?」


俺と小山の会話に、里桜ちゃんがクスクスと笑う。


やっぱ里桜ちゃんは、笑っとった方がええなあ。


「そろそろじゃがいも出来たかなあ?」


里桜ちゃんがふいにそんなことを言い出した。


「あぁ、じゃがバター?
結構前に入れたし、もうええんちゃうかな?」


俺がそう言うと、里桜ちゃんは火箸を持って来て、じゃがいもの入ったアルミホイルをひとつ挟んだ。


「よいしょ…っと」


うまく掴み上げたのも束の間、熱い熱いじゃがいもが、火箸からスルリと落ちた。


そしてそのまま、なんと里桜ちゃんの足の甲を直撃した。


「熱っ!」


ヤバイと思った俺は、慌てて里桜ちゃんに駆け寄った。


「真っ赤になっとる。
はよう冷やさな」


火箸を持ったままの里桜ちゃんから急いで火箸を奪い取ると、俺は里桜ちゃんの手を引いて、水道のある場所へと急いだ。