「なんか、そういうの行くイメージじゃない」


キョウセイの言っている意味がわからなくて、目がぱちぱちしてしまう。


「彼氏…、欲しいのか?」


「え…?」


「誰かと付き合いたいとか…思ってる?」


「あの…」


どうしちゃったのかな?


今日のキョウセイ、ちょっと変だ。


「私…、しばらく彼氏はいらないって思ってるよ…」


私の言葉に、ピタリと動きが止まるキョウセイ。


「そうなのか?」


私はうんと頷いた。


その瞬間。


気のせいか。


キョウセイが小さなため息をついたような気がした。


安堵のような。


そんなため息を。


でも…。


そんなはずないよね。


キョウセイには、彼女がいるんだし。


きっと、気のせいだよね。


そんなことを思っていたら、いつの間にか雨が小降りになっていた。


「もうすぐ止みそうだな」


キョウセイの言葉に、胸がチクリと痛くなった。


二人きりでいられるのも、あと少し、か。


もう少しだけ、一緒にいたかったな…なんて。


でも、そんな私の思いなど空は知るはずもなく…。


すっかり雨は止んでしまっていた。


「そろそろ下りようか」


そう言って立ち上がるキョウセイに、私はコクリ頷いた。


あーあ。


ちょっぴりガッカリだな。


仕方なく私も立ち上がり、歩き始めた。


私の前を歩いているキョウセイの背中を見つめると、寂しくて思わずため息が洩れる。


相変わらず綺麗な背中だな…。


なんてことを思っていたら。


坂道を少し下りたところで、急にキョウセイがくるりと振り返った。


「どうしたの?」


きょとんとしていると、キョウセイがサッと左手を私に差し出した。


ワケがわからず、呆然と立ち尽くしていると…。