小山君のおじさんも、雨が止むまで動かない方がいいと言っていたらしく、私達はしばらくその屋根の下のベンチでじっとしていることにした。


「多分、すぐ止むだろうってさ」


私の右隣に座るキョウセイが空を見上げて言った。


その綺麗な横顔を見た途端、私はさっき抱きしめられた事を思い出して恥ずかしくなってしまった。


「なぁ、永瀬」


急に私の方を向くキョウセイとバチッと目が合ってしまい、思わず肩がビクンと上がった。


「な、何?」


もうっ。


いきなりこっち見るから、ビックリするじゃん。


「永瀬って、今彼氏いないんだよな?」


うっ。


どうして今、そんな話をするんだろう。


「い、いないよ」


彼氏なんて…。


私には無理な話なんだから…。


きっとまた。


フラれてしまうに違いないもの。


「あれからまた…。
コンパとか行ったりしたのか?」


「へっ?」


思わず変な声が出た。


何、それ?


「行ってないよ、全然」


ライブまで忙しかったし、試験もあったし。


それが終わったらすぐにバイトに来ているのに、そんなヒマあるわけないじゃないか。


「東京戻ったらさ、またそういうの行ったりするの…?」


「え…?」


どういう、意味…?


「さぁ…。どうかな…。

誘われたら、行くかなあ…。

よくわからない…」


キョウセイがなぜそんなことを聞くのかわからなくて、思わず口をへの字に結んでしまう。


「なんかさ…」


「ん?」


「永瀬って、コンパとか行くの、似合わないなって思って…」


え…?