しばらくすると雷は止み、雨音だけがその存在を主張していた。


すっかり震えもおさまった私は、ゆっくりキョウセイから身体を離した。


そして、一歩後ろに下がる。


こんな時、一体何を話したらいいのか。


キョウセイの顔を見れない私に反して、キョウセイは私の顔を上からじっと見つめているようだ。


その視線に頬が熱を帯びていく。


「雨…止まないね…」


とりあえず、そんなことをつぶやいてみた。


「…うん。まずいよな。
このままじゃ夕飯の準備に間に合わなくなる」


キョウセイの言葉にハッとしてスマホの時計を見てみると、すでに時間は16:30になっていた。


「俺、ペンションに電話入れるよ。
今、山を下りるのは危険過ぎるし、雨が止むまでここにいよう」


そう言ってキョウセイは、ペンションに電話をかけ始めた。


キョウセイは私の目の前で、小山君のおじさんに事情を説明している。


ちょっと散歩のつもりが、こんなことになるなんて…。


山を甘く見てはいけないなと、私は心の中で反省していた。