「永瀬っ」


耳元に響く中低音の声。


「キョウセイ…?」


直立不動の私をすっぽりと包み込み、ぎゅっと抱きしめるキョウセイ。


「あの…」


「ごめんっ。一人にして。

怖かっただろう?

もう大丈夫だから」


キョウセイの優しい言葉に私の涙腺はさらに崩壊し、キョウセイの背中に腕を回してぎゅっとしがみついた。


走って来たせいかキョウセイは息を切らしていて、心臓の鼓動がドクドクと速い音を立てていた。


キョウセイの前髪から雫がぽたぽたと私の頭や顔に落ちる。


濡れて肌が透けたキョウセイのTシャツに顔を埋めると、私のTシャツも次第に湿っていってしまう。


それでも私達は激しい雷の音と雨音を聴きながら、しばらくそのまま抱きしめ合っていた。