「は、萩原さん……」
思ったよりも小さな声で私は萩原さんを引き留める。
その声で彼は立ち止まり、ちらりと私に目線を向ける。
そんな彼に対して私は何を話していいのか考えていなくて、ただ慌てふためいた。
何をどう説明する?
が、今の私か何を言っても余計に物事を助長してしまう様に思える。
「あのさ、黙っててやるから、早いうちにどうにかしろよ」
「………」
彼はそう言うと早足にこの場を離れた。
私は結局何も言えないまま、ただ立ち尽くす事しか出来なかった。
そんな事があったからか、何となくトシくんと顔を合わせるのが気まずかった。
けどトシくんはこの事実を知らない。
たぶん萩原さんはトシくんには言っていないだろう。
そんな気がする。
けど、どうしたらいい?
本当はトシくんに相談したい。
萩原さんから言われた事を全て伝えたい。
が、こんな話し社内では出来ない。
だからってわざわざトシくんに時間を作って貰うのも躊躇われる。


