ガッン。
部屋のドアが閉まったと同時に彼の唇が私の口を塞ぐ。
まだ手にはコンビニ袋も自分の鞄も持ったまま、彼もそれは同じ筈なのに、そのキスは次第に深くなる。
「……んっ」
キスの合間に漏れるのは、なんとも信じがたいぐらい甘い吐息。
トシくんって見掛けはかなり温和で優しそうなのに、時々こんな激しいキスをしたりする。
そんなに私が欲しかったのかな?
そう思うと嬉しい反面、違う気持ちも持ち上がる。
所詮彼は私のものにはならない。
いや、なれない。
こうやって私を今は欲してるけど、家に帰ればいいパパでありいい夫であり。
私の前ではこんなにも男の部分を惜し気もなく露にしてるけど、それは私の前だけで、ほんの一部で。
そう、考えると今してる行為ですらなんだか悲しくなる。
いい加減息苦しくて彼のワイシャツの胸元をギュッと掴むと、彼はそんな私に気が付いてゆっくりと唇が離れていく。
「……もしかして苦しかった?ごめん。でも、泣かないで」
「………」


