彼が美伽に話しをしている隙にフロントを離れる。
彼は誰にでも優しいから、そんな彼の姿を見ていたらきっとまた嫉妬してしまう。
さすがにこれ以上みっともない所は見られたくない。
だから私は早足に廊下を進む。
が、すぐに私の後を追い掛けて来た彼の手に私の腕は捕まる。
「なんで先に行っちゃうの?」
私の腕を引き寄せ、耳元で囁く彼の甘い声。
その声にまた鼓動を高鳴らせながら、私は軽く彼の胸を押す。
さすがにこんな所で抱き合ってるところを誰かに見られるのはヤバイから。
けど、そんな軽い抵抗じゃあ彼の腕から逃げられない。
「ねぇ、トシくん……」
「なんか顔赤いけど、どうかした?」
「もう、トシくんのイジワル……」
本当に誰か来たらどうするの?
それだけが気掛かりで、ますます私の鼓動は速くなる一方。
それなのに彼は涼しげな顔で私を見下ろす。
「てーか、さっき嫉妬心丸出しの顔、そっちの方がヤバいんじゃあない?」


