「す、すいません。遅くなりました」



そう言いながら慌てて帰って来たのは、同期で仲良くしている坂口美伽〈サカグチ ミカ〉。



この子は何となくタイミングが悪い。



もう少しだけ彼と手を繋いでいたかったのに、彼女の登場で彼の手は私の指先から離れた。



「うん、慌てなくても大丈夫だよ。坂口さん。ほら慌てるから髪の毛乱れてる」



彼はそんな事を言いながら、さっきまで私と繋いでいた手で彼女の髪の毛にそっと触れる。



や、止めて!!



そう叫びたい気持ちを一心に押さえ込み、私は美伽を睨み付ける。



けど美伽は案外鈍臭いからそんな私に気付かない。



まぁ、だから私達どうにか友達でいられるんだけど。



彼はそんな私を横目で見ながら、クスッと笑う。



もしかして、これも確信犯?



「じゃあ高橋さんご飯言って来て。坂口さんフロント一人で任せて大丈夫かな?
隣の事務所に居るから、なんかあったら声掛けて」