ガシッ




踵を返して浴室に行こうとすると、和穂に手首を掴まれた。




この悪魔、ほんとあたしの手首掴んで動き止めるの好きだよね。




「…おい、何勝手に行こうとしてんだ」


「だってもう食べるだけでしょ?
その熱いお粥食って、舌やけどして、寝ろ」




一言余計な毒が出たけど、気にせずに和穂を睨む。
だってなんかこいつも睨んできてるし。




何が気に入らないわけ?
薬も買ってきてあげたし、お粥も作ってあげたし言うことないでしょ。




掴まれた手首を解こうともう片方の手を伸ばす。




「…ちょっ!」




何が起こったのか分からなかった。
でも気が付けばあたしは和穂の脚の間に座らされていた。




ほんとになんなの、この悪魔は。




身じろぎをしても和穂の腕がガッチリと腰にホールドしてあり、立てない。




和穂を見ると、勝ち誇ったように笑っていた。




「俺は病人だろ?
だったら食べさせてやるのが看病じゃねぇのか」




和穂の俺様悪魔、発動。




何言ってんの、ちゃんと日本語喋ったらどうなのよ。




あ、そっか。そういうことか。




「…あー。かじゅほちゃんは赤ちゃんだから、一人じゃ食べれないんでちゅね?
仕方ない子でちゅね〜」


「…あ?」




ちょっとからかってやった。
真顔で赤ちゃん言葉を使うのは、たぶんあたしだけ。




さらに追い討ちをかけるように、和穂の頬を人差し指で突く。




段々眉間にシワが寄る、和穂の顔。
どうだ、赤ちゃん扱いされる屈辱は。




悔しいなら自分で食え、クソ悪魔。