「着いた」
おしゃれで、カップルしかこれないような雰囲気を醸し出している。
「ここ?」
「ここ」
奴は扉を開けるとあたしが先に入ってから自分も入ってきた。
そういうエスコートだけは慣れてるのね。
「2名様でよろしいですか?」
「はい。」
それではこちらのお席へどうぞ、と笑顔で窓際の席を指定された。
「こういう店慣れてる?」
座った途端に言われる。
「まあ…でもここは初めてかな」
「お母さんが連れてきてくれたの?」
「いや…巧だよ」
その名前を出した瞬間に、彼は目を逸らす。
「巧さんが…」
「でも久しぶりだよ。しばらくあたしが会いたがってないから。」
「離婚?」
「もともと結婚してない」
言ったあとにハッとした。
なんでこんなに教えちゃってるんだ。

