「よし、到着」
「外寒いから出たくない」
「それは困った」
あまりにも困ってないような口調で言ってる。
「…でもお腹減った」
頭に軽い手刀が直撃する。
「わがままかっつーの」
「だって、あたしの気持ちは今どっちもどっちだよ!?」
じゃあ、とか椋太郎が言った。
シートベルトを外す。
「これで俺と車の中にいる気持ちが勝つんだ?」
そんなことを言ってこっちに覆い被さるような形になる。
「狭い!狭いから!」
そう言うと席を倒す。
「そういう意味じゃなくて!」
反論しようとすると、お腹がぎゅるる、と耐えきないように鳴る。
それを聞いて笑った椋太郎は
「冗談だよ、昼食べておいで?」
あたしは少し顔を赤くしながら頷く。
席を戻しながら起き上がって、椋太郎がドアを開けてくれた。
「じゃ、また電話してね」
「仕事終わったらすぐする」

