奴は少し目線をそらして、 「無理だ、ごめん」 そんな風に呟く。 何が?とは聞けなかった。 周りの空気が椋太郎の表情がそう言うのをやめさせた。 「帰るね」 助手席のドアを開けて、荷物を持つ。 「送ってくれてありがと」 そう言うと椋太郎はあたしの髪の毛を少し撫でて、 照れ臭そうに「バイバイ」と言った。 「バイバイ」 照れ臭そうな椋太郎んなんだかレアな気がして、 新鮮だったりレアだったりする時が多いなあと思うと、 片桐優雅の彼女さんの『表情が少ない』という言葉は正解な気がする。