ナンパ男がしつこい件について





「でも今日マンションに二人で…おんなじような顔してるし…でもちょっと若い?」




もしかして。



「…………椋太郎の携帯でどうしてかけてきたんですか?」




「優雅がそっけなく、電話帳に藪塚ってあるからそれだって」




「多分それあたしのお母さんです」



バカじゃないの?と顔に書いてある。





「うちのお母さんホスト通いなんです。それで、片桐優雅さんのこと相当気に入ってました」




多分、片桐優雅の彼女なら椋太郎のこともしってるはずだ。




「嘘、つかないでよ…。あたし椋太郎から携帯奪ってきたしわわざわざ会社まで行って」




「お、お疲れ様です…」




「でも絶対浮気…他にも女はいるし、もう堪えきれない…でも別れたくない」




気持ちはわかる。



痛いくらいにわかる。



胸がズキズキと痛む。




「とにかく、お母さんのマンションの部屋行ってみましょう!片桐優雅さん、そこにいるかもしれないし」



「え、ええ…」



片桐優雅のこと、大好きなんだろうな。



ゆっくりと歩いていくと、また携帯が鳴った。




片桐かと思って出ると



『唯花ちゃん俺の携帯奪われたんだけど』




知ってるよ。



「知ってる、その携帯あたしの隣にいるから安心して」



椋太郎は黙った。



『………隣?』




そこを突っ込んだか。



「隣。具体的に言うなら左に」



左とか、どうでもよさそうに奴は




『今どこ』



と言った。



ていうか椋太郎こそどっから電話かけてるの、という疑問は置いておいて、




「歌舞伎町。お母さんのマンションにいるから」



『わかった。仕事終わらせてすぐ行く』




そう言って切った。



会社の電話からかけてた?