この人だってわざとじゃないし。
「取り乱してすいません。いっつも友達から落ち着きがないって言われて」
名刺を手に取る。
「…無理しなくていいよ?」
「大丈夫です、ただ職業が嫌いなだけだから」
店から出る。
「ごめんね、ナンパしといてこんなの」
「ううん、気にしないでください。…これっきりの縁だろうし」
「また、会ったらとか考えたらだめ?」
それきっと、他の女の子なら、メロメロになるような甘い声で言う。
「それは…その時」
それだけ言ってこの場を立ち去る。
定期をかざして、改札を通った。
電車に乗ってスマホをいじる。

