中に入って、椋太郎に近づいた瞬間、お酒臭いことに気づいた。
「さっきまで会社の飲み会で久しぶりに飲んだ」
「…お、おつかれ」
「なんか上司が奥さんの話みたいにしてして。そしたら俺も話回されてさ、そういや全然会ってないなって」
顔はほんのり赤くて、他は特に変わってない。
さすが、少し前までホストだったというか。
椋太郎は腕を広げる。
多分見た目より全然飲んでるな…
お母さんで慣れてるけど、しかめっ面になる。
ネクタイをほどいてこっちに来た。
「俺、ゴールデンウィーク中ずっと働いてたんですけど」
「え?まじ?」
ゆっくりと頷く。
「メールもくれないし、今めっちゃぐったり」
「おつかれ」
と言うと、微妙な顔つきになる。
「それだけでお前…俺が癒されるわけないじゃん」
か、彼女が「おつかれ」って言ってやったのに
「じゃあ何すればいいの?」
少し不機嫌になりつつ聞くと、奴はにっこり笑って
「キスして?」
………………
「誰がするか」
「ええー」

