まだ手を握ったままで、
「そこのソファ座っといて」
と言われたのでうなずくと手は離れた。
すたすたと歩いてゆっくりと座る。
想像以上に柔らかくて座り心地がいい。
部屋を見渡すとリビングらしく、大きいテレビにモノクロだけのきっちりとした家具。
椋太郎がどこからか帰ってきた。
目の前の机に紅茶が置かれた。
そして無言で隣に座る。
「俺も…いいや」
なにかを取りに行こうとして辞めた。
「取り敢えず涙拭いて」
椋太郎が指先で優しく拭う。
「俺の気持ち、どうだと思う?」
「…幾分不愉快」
そう答えると吹き出す。
「なんでそうなるの」
ケラケラ笑って、一回だけ深呼吸をした。
「遊んでみたの。唯花が寂しがるかなって。…連絡先渡してくれた時みたいな必死な素直な唯花が見たかった」
その言葉にむかつく気力さえない。
「でも…ほんとに素直になっちゃってさ。」
緩んだ空気がまた緊張を取り戻し始めた。
こんなに緊張したのは初めてでどうしたらいいかわからなくて下を向いてる。
「さっきの元気はどこへやらだな、ほんと」
「…うるさい」

