「だから…っ、まだ…………」
ああ、あたしなにやってるんだろ。
それ以上は言葉にできなかった。
あたしが黙ると、椋太郎は口を開いた。
「手、離して」
その言葉に、凍りついた。
「はやく」
「ごめっ…ん」
そっと離すと、
椋太郎はあたしの手を握った。
ゆっくり歩いていく椋太郎についていく。
これが『好き』か。
このドキドキが、恋なのか。
手が少し震えた。
椋太郎は少しだけ握る力を強くした。
まっすぐ歩いていって、知らない大きいマンションに入る。
鍵で自動ドアを開いてエレベーターの上ボタンを押した。
何階かを押すと、ピンポンという音が聞こえてエレベーターを降りた。
少しだけ歩いてドアに鍵を刺す。
お母さんのマンションの部屋よりも全然大きい。
「靴脱いで」
その口調はよくわからなかった。
だから無言で靴を脱いで上がる。
「お邪魔します…」

