会計を済ませる椋太郎。
「ありがとうございました」
店員がそう言う。
ゆっくりとこっちへ来たあたしに
「帰りは気を付けろよ」
なんて言って、また頭を撫でると、
扉を開けて出ていってしまった。
やだ。
まだ、離れなくない。
そう思った時には外に急いで出ていってた。
椋太郎の後ろ姿を見つける。
夕焼けに照らされて茶髪は普段よりも明るく見える。
走って距離を縮める。
服の袖を引っ張って止めた。
「好き」
口が勝手に動いたような気がした。
「いちいちむかつくし、会話続かないし、ホストだったし。
だから嫌いだと思ってた」
頭が真っ白で、ただただ口が動いていく。
「椋太郎のことバカにしてたけどさ…
あたしも今までわかんなかった。
好きがわかんなかった。
椋太郎のこと考えると自然とにやけちゃって、
気になってホスト好きの友達に聴いちゃったりとか…
笑顔見ちゃうとどうしようもないようなむず痒いっていうか…そういうのが心の中で渦巻いてて」
あたしの話に耳を傾けてくれてるのかどうかもわからない。
「行ってほしくない。まだ一緒にいたい…」
涙が頬を伝うのがわかった。
泣いちゃだめだって思っても出てくる。

