放課後。

静まり返った教室に男子四人、女子一人が残された。
誰か言わなくても分かるよね?

「あ…あのぉ」

私は机に足を乗せ、ケータイをいじっている“王子”におずおずと話しかけた。
「あ?」

ひぃっ…怖いよぅ。

「あっ…えと」

あれ?名前、なんて呼べばいいんだろう。

王子だから、“様”とか?
「あのですね、凪様。できればそんな怖い顔しないでいただきたいのですが…。」
言った瞬間、凪様の怖かった顔が更に般若のごとく歪んだ。

私なんか変なこと言った??

頭に“?”をつけて首をかしげる私の横で「ぶっ」と吹き出して笑う王子たち。
「あっははははは。あー…おかしー~」
お腹を抱えて爆笑しだすチャラ王子。



「ふっ。くくっ宮崎さん、“様”なんてつけなくていいよ。いくら“王子“って呼ばれてるからって、普通に呼んでよ。」

爽やかさMAXの笑顔で微笑むー…陸君。

あれれ?でも“王子”ってことには代わりないから、やっぱ“様”なんじゃあー…?

「ねぇ?理人もいいよね」
「別にいい」

うわぁ…喋った!

初めて聞いたよ。この人の声。

「あっ…じゃあ、遠慮なくー…「少しは遠慮しろ。ブス。」」

重なる私と凪君の声。

凪君は、目線をケータイからそらさないまま、私にそういった。

こんのクソチビッ

確かに可愛くはないけどっ
ないけど!
告白ぐらいはされたことあるもんっっ!

私はおもいっきり凪君を睨み付けてから、朝からずっと気になっていたことを口にした。

「そう言えば気になってたんだけど」

「んだよ。言ってみろ。10秒以内で」
「なに?デートしてくれたら答えてあげる♪」
「なに?宮崎さん。俺で良ければ答えるよ」
「…」

あぁ…なんでこんなにも性格に差が出来るんだ?

そして何故に理人君、さっき陸くんの質問に答えてたよね?

えっ?無視?無視なの?

なにこれ?イジメっ!?まさかの集団イジメですかっ!?
まあいいや。そんなことより…

「あのさ、“付き人”ってなんなの?」

ルールがあったのは知ってたけど、具体的に何をするのかは分かんない。

「あー…それはね…」

まるで悪いことをしてそれを母親に問い詰められているときみたいな顔で口を開く陸くん。

「陸。今は言うなよ。まあまあ、それは海斗が来てからでいいでしょ?葵ちゃん。明日には海斗も来るでしょ」

「ね♪」って笑う俊くん。
葵ちゃんー…?

チャラいな。

なんか一個、引っ掛かったところがあるんだけど、俊くん笑ってるし、いいのかな?

「分かった。教えてね」

この時、私は何の疑いもなくうなずいた。


“付き人”なんてただの荷物もちとか、雑用がかりてかそんなもんだと思ってた。

本当、今思えば馬鹿だったと思う。

この時陸くんの顔を見て、無理矢理にでも問い詰めてれば良かったのにね。