「葵ちゃん?」


「ぅえっ!?は、はいっ!?」

海斗が出ていった出口一点をずっと見つめている私の顔を、俊君が心配そうな顔で覗き込む。


「ぷっ。ぅえっ!?って…」

俊君が私の真似らしき変顔をしながら笑う。


それが、本当にぶっ細工な顔。


つられて私と陸君、理人君、凪君も笑う。


俊君かっこいいのに。…女の子たちが見たらきっと悲鳴ものだろうな。


「ーねぇ、葵ちゃん?」


ふっと突然真剣な顔つきに変わった俊君。


皆、なんとなく空気を察してか、ほんの少しだけ身構える。


静まり返った公園には風で木の葉が揺れる音しか聞こえない。


「俺ね、もう我慢しないことにしたんだ」


「?」


「今までは我慢してたけど、欲しいものはちゃんと欲しいって言おうと思って。」


「うん…?」


うーん?話の主旨はさっぱりだけど、なんだか俊君、吹っ切れた顔してるからいいんだよね?


「うんっ!我慢はダメだよ!欲しいなら欲しいっていわなきゃっ手に入るものも入んないよっ」


「うん、なるほど。そっか」


俊君は少し考えるようなしぐさをしてから、やがて私をグイッと引き寄せた。


「きゃっ!?ー…ぶっ!?」


私の顔面は見事俊君の胸元にダイブした。


「ひゅっ、ひゅんきゅんっ!?(しゅ、俊君っ!?)」


「うん。我慢しない。葵ちゃんが欲しいから。…てわけで、覚悟してね?」


俊君が私を抱き締めたままの体制でにやっと微笑む。

前言撤回。やっぱ少しは自重してください。