「葵っ」

へー…?

あのあと、無我夢中で音楽室から飛び出した私。

ふいに廊下で名前を呼ばれ振り返った。

ー…先にいたのは

「理人君っ!?」

さらさらの黒い髪を揺らしながら、息を整えてる理人君がいた。

「なっ…泣いてるかとっ…思って…」

息が乱れてるよ。走って来てくれたの?

ていうか普通にしゃべれるじゃん。

嫌われてた訳じゃなかったんだね。

「あははっ泣いてないよ!」

驚きと嬉しさで涙なんて引っ込んだよ。

「葵っ…」

「戻るよ。私」

音楽室にいかなくちゃ。

そういえば、付き人のルールで、途中で辞めたら退学ってルールがあったわ。

「ありがとね!理人君が来てくれただけで嬉しいよ」
「でもっ…」

でも、それは本心なの。

だって、天王寺海斗が来る前、凪君は“泣くなよ”って言ってくれた。

あれはきっと“警告”だったんだよね。

「わたし、みんなと友達になりたいの。もっともっと知りたい。」

音楽室の前に着き、ピタッと立ち止まる。

立ち止まっても仕方ないもん。

私はガラッと勢いよく扉を開けた。