「ぶっははははははは」


「…ちょっと」


放課後の空き教室、えと、第四音楽室に笑い声が響き渡る。


何で第四音楽室なの?って感じだけど、みんなが言うにはここはもう使われてないから、誰も来ないんだって。


「笑いすぎだぞ。俊」


私が不機嫌そうにしていたから空気を読んで言ってくれたのか、ただ本当にそう思ったから言ってくれたのか、陸君がため息をつきながら言う。


「だっだって、女子のリーダーにばーかって。ばーかって!」


思い出しながらまた笑いだす俊君。


「(怒)」


「あっそう言えばさ、海斗は?」


険悪な雰囲気を感じ取った陸君が、なんとか話題を変えようとピアノの上に座っている凪君に話題を振った。


「あ?もう来るはずだけどー…」


その時、凪君の声と重なるようにしてガラッと音楽室の扉が開いた。


「っー…」


「おう。遅かったな。海斗」


「ああ、ワリ。」


海斗ー…


なにこの人。


かっこいいー…


確かに、俊君も凪君も、陸君も理人君もかっこいい。

二重だし、まつげ長いし、性格はー…悪いけど、悔しいぐらいスタイルいいし…

でも目の前の男の子はそんなのとは比べ物にならないくらいかっこいい。


さらって揺れる黒い髪はきれいにセットされてるし、何もかもが、整っている。

今まで興味もなくて見てなかったけど、改めて見ると、モテるのもわかる気がする。


でも…なんだろう?


すごく…“冷たい”ー…


「泣いたりすんなよ」


いつの間にかピアノ台から降りて私の隣に来ていた凪君が私の耳元でボソッと呟く。


へ?ー…


泣く??


「海斗、この人が新しい“付き人”の人」


私は凪君の言葉に疑問を持ちながらも、陸君に紹介され、私もあわてて自己紹介をする。


「あっえと、同じクラスの宮崎葵です」


天王寺海斗は「ああ。さっきの」と呟くと私の両手を片手で拘束して壁にドンッと押し付けた。


「なっ…んっ!?」


ふと唇に柔らかい感触が触れる。


何?何なの?これー…


「んっ…んんっ」


目の前にあるのは驚くほどに整った天王寺海斗の顔。

「はぁっ…んんっ」


息を整えようと口を開けると、強引に入ってくる舌。
これって、キスー…?


なんでー…?


「はっ…はぁはぁ」


しばらくして離された唇は、まだ、天王寺海斗の唇の感触を覚えてる。


な…に?


足に…力が入んない。


「海斗っやりすぎだ!」


そう叫んでる凪君と陸君の声がやけに遠く聞こえる。

「教えてやるよ。“付き人”の仕事」