和田菜月物語

「福部未咲ってテニス部の?｣

「そうだよ」

私はびっくりしすぎて声が出ない。

福部未咲
優しくてテニスが上手な女子。
未来と対応できるくらいのかわいい子。
4組で一番かわいい子だ。
5組の野球部キャプテンの坂崎翔の彼女だ。
自分よりも友達を優先する子で
この事が彼女の長所であり悪い所でもある。

「あのさ、いきなりだけど」

私は何を言われるのか怖かった。
だがそれは本当にいきなりの事だった。

「今日テニス部に見学しに来ない?｣
「えっ!?」

未咲は笑顔でこう言った

「飯沼君にも会えるよ!
テニス部と野球部ってすっごく近いからさ!」

私は少し迷ってしまった。
ここで行ってまた、高島に何か言われないかが心配だった。

未咲は私の表情を見てある事も言った。

「あと、バスケ部も近いんだよ!」

私は『バスケ部』って言う言葉に反応してしまった。

「そうなの?」

未咲は「喰い付いたな…」的な顔をしていた。
どうやら、あたしが持っていた物にバスケットボールのストラップがついていたのに気がついたらしい。

これは文化祭の時に亮磨がくれた物だ。
だから、いつも身につけている。

「あとね、バスケ部にも新人が入ったらしいけどそれが、すっごく上手なんだってさ」


私は、見学の事を考えていたら

「どうする?野球部もバスケ部も見に行ってさ!」

私の返事は決まった。

「うん、行くね」
「よし!決まりね。じゃあ放課後にテニスコートで」

そう言って未咲は4組に戻って行った。

教室に戻ると亮磨が駆け寄ってきた。

「なぁ、菜月」

私は苦笑いで答えてしまった。
なぜか、バスケ部に反応した事が恥ずかしかった。

「何、亮磨?」

すると亮磨は真剣な表情で

「神埼将太って知ってるか?」
「うん…知ってるけど何で?」

そう言うと亮磨は少し怖い顔をしていた。

「もう、そいつには近づくなよ…」

私は何でそんな事言うのか分からなかった。

「何で?理由を教えてよ…」

そう言うと私を怒鳴るように亮磨は

「お前には関係ない!」

私は亮磨から一歩離れてしまった。
亮磨は我に返ったように

「ごめん…。とにかくそいつには気をつけてくれ…」

そう言い亮磨は教室を出た。