和田菜月物語

「ここ」

そう言って亮磨はある建物の前に
私を連れて行った。

「ここは…?」

「さぁ」

「さぁって!」

「でもな…」

「でも…?」

亮磨は意味深な顔をしてこう言った。

「ここに…」

「ここに?」

「前田と上原が入ったのを見た」

私はそれを聞いた瞬間
私は走って建物の中に入った。

「待てって!菜月!」

「中に居るかもしれないじゃん!」

「もう居ねぇよ!!」

「…えっ?」

亮磨は私の前に立った。

「さっき出ていったんだよ…」

「そっか…」

私は戻ろうとした。
すると亮磨は私の手をつかんだ。

「離してよ…」

「お前さぁ分かってんの?」

「離してよ!!」

「自分の立場分かってんのかよ!」

亮磨は私を引き寄せた。

「な、何…?」

「お前は分かってねぇ…」

「だから何が!?」

「お前は上原に利用されてるって事だよ!!」

「…由紀はそんな人じゃな」

「お前だってうすうす気づいてるんだろ!」

「えっ?」

亮磨は私の目をそらすと
何か悔しそうな表情でこう言った。

『上原が茶木だって事だよ!!』