和田菜月物語

「何顔赤くしてんだよ」

そう言って部屋に入ってきたのは
せなだった。

「せなか。ビックリした…」

「何にビクッリしてんだよ」

「いや…。ちょっとね…」

「何かムカつく」

そう言うとせなは私にこう言った。

「さっき前田が…」

「知ってる!!」

私はせなの言葉を消すように言った。
もう思い出したくなかった。

「知ってるから…。もう何も言わないで」

「そっか…。ごめん」


すると
せなは私の手をつかんだ。

「ちょっ!せな!?」

そして
私は外に出た。

海まで連れてかれた。

「どうしたの!?」

「ここに居たんだ」

「誰が!?」

私はビックリしていて
落ち着く事が出来ない。

「翔子が…」

私はビックリしてしまった。
声も出ないくらい。

「ついさっきだ…。電話してた」

私は腰を抜かしてしまった。

「それ伝えたくてさ…」

私はゆっくり立ち上がって
ホテルに戻ろうとした。

「逃げる気か!」

せなは私の手をつかんで私を止めた。

「気にならないのかよ!」

「…もう良いんだよ」

「何がだよ!」

「もう良いの!!」

「菜月…?」

全部知ってる!!
私は知ってる!
翔子が生きてる事も
翔子の正体も…。

そう言いたかった。

でも
言えなかった。