その頃
私と亮磨は…。

「菜月って歌うまいな」

私は顔が赤くなり

「そ、そんな事ないよ!」

「何でだ?」

「私より翔子の方がうまいよ」

「そうなのか」

その時
冷たい風が二人の間を通って行った。

「寒くなったね、帰ろうか…」

私が帰ろうとした時だ
亮磨が私の手をつかんだ。

「…亮磨?」

「俺さぁ悔しいんだ…」

亮磨は
私の手をつかんだまま
外を見ていた。

「何が?」

「高島に先越されて…」

「えっ…?」

亮磨はこっちを見た。

「俺もお前が困ってる所見たくねぇ」

「えっ…」

亮磨は私から目をそらした。

「もう行くか…」

私も恥ずかしくなって下を向いたまま

「う、うん…」

私達はクローゼットからの
出口しか知らない。


まさか
部屋ではあんな事が起きてるなんて
知りもしなかった…。