『好き』と、言いたいだけなのに、その2文字はなかなか出てこない。


モゴモゴと口を動かしている間に、ホームルームの開始を知らせるチャイムが校内に鳴り始めた。


「千沙?」


大志が、心配そうにしている。


「な、なんでもない」


あたしはそう言い、ニコッと笑った。


勢いで告白してしまいそうになったけれど、今は恋羽も一緒にいるんだった。


あたしは慌てて恋羽の手を握ると、「大志も行かなきゃ遅刻するよ?」と言って、その場を離れたのだった。