「家で待ってたらよかったのに」

「いやー、暇だったし」

「そう?はい。後ろ、乗って」

「はーい」


俺はシートに入れていたメットを出すと、それを朱美ちゃんに渡す。
そのメットをした朱美ちゃんはバイクの後ろに跨る。

昔はノーヘル当たり前だった、花蓮だったけど。
こうして。
きちんと、大人になる。


そんな麻美の事も…少し、見たかったな。
スーツに身を包んだ麻美とか。

……想像出来ない。


「何笑ってんの?」


麻美のスーツ姿を想像して、笑ってたらしく朱美ちゃんに訝しげな顔で見られていた。
我に返った俺は、慌ててメットを被り発進させた。


「どこ行くーーーー?」

でかい声で朱美ちゃんに尋ねると

「どこでもー!」

同じ様にどでかい声で朱美ちゃんが返事をする。



どこでもか。
どこにしようか。


………久しぶりにあそこに行こうか。


俺が今まで行こうと思わなかった場所。




連れて来たのは。


――――――…かつて、麻美と来ていた海。