「私と信司はもう、終わったの。
だから、信司に出て行くって言う必要もないし、関係ないんだ」

「…そんな」

「哲さん、言わないで」

「………」


それに頷く事も、首を振る事も出来ずに俺は佐緒里ちゃんを見た。
佐緒里ちゃんも俺を同じ様に見る。


「いいの?」

「いい」

「後悔しない?」

「しない」

「…わかった」


佐緒里ちゃんは情けなく眉を下げると、「ごめん」と言った。

そのごめんは。


信司をまだ、好きだと言ってるようで。
胸が苦しくなった。

少しの沈黙の後、俺は佐緒里ちゃんに問いかける。


「送ろうか?」

「いい。あっちにバイク止めてる」

「ん」

「急にごめんね、哲さん。
じゃ…また、会えるその時まで」

「うん。シカトしないでね」

「はは、気付かないぐらい私が綺麗になってたりして」

「今でも十分綺麗だよ、佐緒里ちゃんは」

「またまた~」


少し笑い合った後、手を上げて俺は佐緒里ちゃんに別れを告げた。
佐緒里ちゃんもそれに返す。


俺はバイクに乗って、自宅へと向かった。
そして、帰宅したら信司に連絡をしようと決めて。