「私だってねえ、彼氏の一人や二人いたんですからね」

「嘘、いつの話?」

「えー三年前ぐらい」

「え。そっからフリー?」

「悪いかよ」

「いや、……俺と同じ」

「はあ?嘘つくなし」

「いや、まじまじ」

「それは流石に信じないから」

しらっとした顔で朱美ちゃんが俺を見た。

朱美ちゃん。
だってさ。
俺ね?


「だって、俺麻美好きじゃん」

「……は?」

その言葉に顔を思い切り顰める朱美ちゃん。


「いや、俺…麻美引きずってるし。
未練たらたらだし。だから、なんつーか他の子に本気になれなくってさ」

「………哲さんって…器用そうで不器用だね」

「はい?」

朱美ちゃんは腕を組むと、今度は情けなく眉を下げて俺に言った。
その顔は見てるこっちまで切なくなってくる。