「いきなり付き合ってなんて言いません。
友達から無理でしょうか?」


「え、お友達?いいよ、友達なろ」


「本当ですか!?」


「うん、いいよ」


「ああ、よかった!」



そうやって、安堵した彼女に向かって俺ははっきりと言った。


「俺、ずっと好きな人いるから…。
それでもいいならお友達なりましょう」


そう。
ずっと。


「…彼女ですか?」


「いや、…彼女…だったのかな」


意味がわからなくてその子は首を傾げる。


「…もう、いないんだ。この世に」


その言葉にはっと目を見張った。

それから、きょろきょろ視線を泳がせて、言葉を紡ごうと思考を巡らせていた。


それが手に取るようにわかるから、思わず口角が上がる。




大体の女の子は、こんな反応だったから。

別に同情の言葉が欲しいわけじゃない。





麻美がどんな子か、わかってくれるなら俺はそれでいい。

それで。


「ありがと、好きだって言ってくれて。
また、会ったら声かけてね。
店にも来ていいし。
それじゃ」


結局、連絡先も教えないまま、俺は定食屋を後にした。