「よし、カラオケでも行かねえ?」


スクッと立ち上がると、朱美ちゃんは一言そう言う。


「うん、そうしようか」


曖昧に笑った俺に朱美ちゃんが気付いたのかはわからなかった。
だけど、その後切なそうに笑っていたから気付いたかもしれない。


カラオケでたくさん歌った後、俺は朱美ちゃんを家まで送る。
いつもの朱美ちゃんで、笑顔でまたねーなんて言って俺に手を振っていた。

家に帰るまでも、着いてからも、俺は朱美ちゃんの事をずっと考えていた。


“だからこそ、真っ直ぐな哲さんとかが好きなんだよ”


俺って、真っ直ぐなんかな。

ただ、麻美を忘れられないだけで。


“前にも言ったけど…哲君はこんなに素敵なのに…。
自分じゃ無理って決めつけてる様な気がして”


堤さんの言った通りだな。

俺が前に進めないのは――――。


色々と無理だと思ってるからかもしれない。


もう、麻美に会えないんだから、無理だと思ってしまうのはしょうがないけど。