「…わかった、言うよ」

「うん」


そう言うと、朱美ちゃんは俺の背中へと腕を回す。
それから、俺の胸元に頭をつけて体重を預ける。


「私は、哲さんが好きだよ」

「……うん」

「いつ好きになったかはわかんないけど、気付いたら好きだった。
でも、麻美は既にいなかったし、麻美しか見てないの知ってたし。
私の気持ちは、生涯誰にも伝えるつもりなかった」

「………」

「でもさ、やっぱきっついわけよ。
一切、なびく事のない相手を想っていくってのは。
だから…麻美への想いをハッキリ聞いたら諦めつくんじゃないかって」

「だから?」

「そう、だから、麻美へ告白をして貰った。
……哲さん、思い出して辛かったよな、私が諦めたいが為に…ごめん」

「………」


今の、朱美ちゃんの涙は…。

俺が麻美をどれだけ好きかわかったからの涙ではなくて。


どれだけ好きかわかったから、それを思い出させてしまった自分への涙だったんだ。