「どうして、こんな事言わせたの」

「どうしてって、哲さん」

「朱美ちゃん、苦しいでしょ」

「……な、何言って」

「俺、結構自分勝手なの。
優しくなんか、本当は全然ない。
今だって、朱美ちゃんがいるのに、麻美への想いぶちまけた」

「それは、私が言えって…」

「じゃあ、何で泣いたの?」

「………それは」

「それは?」

「…………」

「それは何?朱美ちゃん。俺、優しくなんてないの。
それ、聞かないと放さないよ」

「………」


それから、暫く朱美ちゃんは黙っていた。
俺からは何も言わず朱美ちゃんの言葉を待つ。


何分経ったか。


朱美ちゃんは変わらず、俺の腕の中にいる。

観念したのか、朱美ちゃんが静かに口を開いた。