高校1年生の時だったか、2年生の時だったか。
今でも私が憶えている授業内容がある。



太陽が暖かく眩しい昼下がり。
私は真新しいノートを広げ、少しずつ意識が遠退きながらも授業を受けていた。


そのまま眠ってしまうのもいいが、少し高い女性の声が、それを遮っていた。

「だからこの例文の訳はここを進行形にして、」
「ここ、ちゃんと板書しておくように」


無理矢理に大きな声を出そうとするキーキー声がうるさい。耳障りだ。

自分勝手ないらつきを抑えて、私は先生の声を受け入れる。
ただただ教科書に載っている部分を読むだけのつまらない授業なので、どうせ大したことではないだろうと私は目線を机に落としていた。


開かれたページには、重要なのか枠に囲まれている“状態動詞”の文字と、例文。
私はシャーペンを持ち、適当な字でそこを写した。
そして、

「状態動詞であるknowは進行形のingを書かないけど、現在進行形になるから注意して」


という先生の言葉を、
“ingはつけない”“現在進行形となる”

そんな簡潔な言葉でまとめ、書き入れた。